羽田空港国際線旅客ターミナル 様

「羽田空港国際線旅客ターミナル」のイメージ画像

4ヶ国語による放送や直感的に操作できる操作卓など、ユニバーサルデザインを追求した非常用放送設備と旅客案内放送設備を構築。

概要

首都圏からの「欧米や東アジアへの玄関口」として注目を集める羽田空港国際線旅客ターミナルに、TOAの「非常用放送設備」と「旅客案内放送設備」が導入されています。大規模な空港施設において、国籍や年齢の異なるさまざまな利用者に緊急情報やフライト情報などをきちんと伝えることは想像以上に困難です。そこに放送を聞く側、流す側の双方にとってユニバーサルデザインを追求した放送設備を構築しています。

納入情報

納入先 東京国際空港ターミナル株式会社 様
納入品 非常用放送設備、旅客案内放送設備
納入時期 2010年7月
納入背景 東京国際空港再拡張事業により、国際線ターミナルを新設するに際して、消防法などの各種規制に対応できる放送設備が必要だった。

課題と解決のポイント

課題

  • ユニバーサルデザインへの対応(外国人、聴覚障害者、高齢者への対応)
  • 非常放送エリア選択時の操作性
  • 多機能化がすすむ操作卓の操作性・利便性

解決のポイント

【非常用放送設備】

  • 音声警報の4ヶ国語(日本語・英語・中国語・韓国語)放送
  • 非常放送の鳴動と連動してトイレ個室に設置したキセノン灯を作動
  • コンピューターディスプレイ上で直感的に放送エリアを選択可能

【旅客案内放送設備】

  • IDS連動によるフライト情報の4ヶ国語(日本語・英語・中国語・韓国語)自動放送
  • 外国語の子音まで明瞭に拡声できるように、広い周波数特性を持つ機器を選定
  • 音圧分布シミュレーションを実施し、場所を問わず均一な音圧で拡声を実現
  • 騒音検出マイクを設置し、周囲騒音の変動に応じた最適な拡声音量の自動制御
  • ARC(Automatic Resonance Control)機能により、共鳴しやすい帯域の出力を抑制
  • タッチパネル画面で簡単に放送回線の選択が可能
  • アナウンス卓で放送音源の録音、放送スケジュールの構築、放送まで対応

詳細

背景

空港を利用する全ての方にとって、聞き取りやすく、使いやすい放送設備の構築を。

首都圏へのアクセスに優れる羽田空港国際線旅客ターミナルには、さまざまな目的や役割を持った方が大勢おられます。たとえば国内外のビジネスパーソンや観光客のように飛行機に搭乗される方やターミナルビル内で買い物や食事を楽しむ方がおられます。その中には外国の方や高齢者や聴覚障害をお持ちの方など、さまざまな方がいらっしゃいます。
また、旅客案内放送を流す各航空会社の方や万が一の場合に非常放送を流す防災センターの方など、各種アナウンス放送を行う方もおられます。
加えて反射性の高い建材を使用した建物は、意匠性が高い反面、明瞭な放送を行う上では厳しい音環境とも言えます。そうした条件のもと、施設を利用される方には「分かりやすく、聞き取りやすい」、アナウンス放送を行われる方には「分かりやすく、使いやすい」放送設備が必要とされていました。

課題

利用者ごとに異なる"聞き取りにくさ"の解消と、直感で操作できる機能性がポイント。

【利用者に対して】

羽田空港国際線旅客ターミナルでは、ユニバーサルデザインの視点に立って非常用放送設備ならびに旅客案内放送設備を検討されました。
基本的に日本語に加えて、外国の方のための3ヶ国語(英語・中国語・韓国語)による放送は必須。そのうえで、聴覚障害者に緊急事態の発生をどう伝えるか。特に一人になってしまうトイレの個室への緊急事態発生の伝達は重要です。また、一般的に高齢者は、小さい音や高い音が聞き取りにくく、妨害音や残響が多い場所での聞き取りを苦手とされます。幅広い年齢層の方が利用するターミナルビルにおいて、若い方にも耳障りにならず、高齢者が聞き取りやすい拡声を実現する必要がありました。

【アナウンス放送担当者に対して】

一般的に階数が少なく、横に広い構造となる旅客ターミナルビルの特性上、他空港と同様に当ターミナルビルでも1フロアをいくつかの放送エリアに分割して放送する方式を採用されています。その場合、放送を実施する際には階情報とどこのエリアに放送を行うのかを選択する必要がありますが、標準装備の機械式スイッチでは放送エリア選択の操作を直感的に行うことが難しいという問題がありました。これらの課題から、情報をきちんと伝えることができ、操作性の優れた放送設備の構築が求められていました。

解決策

多くの空港ターミナルビルを手掛けてきたノウハウを結集し、さまざまな課題に対応できる非常用放送設備と旅客案内放送設備を構築。

【非常用放送設備】

聴覚だけでなく、視覚にも訴えることでバリアフリーにも対応。直感的な操作で非常放送の迅速な発報をサポート。

まず、「非常用放送設備」では、火災時には4ヶ国語(日本語・英語・中国語・韓国語)による音声警報を放送するほか、聴覚障害者の方がトイレの個室におられる場合も、非常放送が放送されると同時に各トイレの個室内に設置したキセノン灯を作動させることで、聴覚障害者の方にも視覚的に周知します。
操作性についても、従来の機械式スイッチの「遠隔操作架」の補助装置として、コンピューターを用いた「遠隔操作器」を併設。これはコンピューターの画面上に旅客ターミナルビルの平面図を模した画像を表示し、その画像上に放送エリアを選択できる仮想スイッチを配することで、直感的に放送エリアの選択ができるもので、誰にでも簡単に放送を行うことができます。

  • 非常放送架
    国際線旅客ターミナルビルの非常放送を制御する心臓部。放送操作部やパワーアンプなどが収納されたラックが整然と並びます。
  • 遠隔操作器
    コンピューターの画面上に平面図が表示され、直感的に放送エリアを選択できます。

【旅客案内放送設備】

外国語の音響特性、高齢者の聴覚特性に配慮した音場を実現。
多機能アナウンス卓で回線選択を簡易化、音源放送を利便化。

「旅客案内放送設備」でも、4ヶ国語(日本語・英語・中国語・韓国語)による案内放送に対応。フライト情報はIDS(インフォメーションディスプレイシステム)との連動で、自動放送を行っています。フライトごとにIDS側で放送言語を選択することができ、外国語の子音も明瞭に聞き取ることができるように高域特性に優れた放送機器を選定しています。
また、当ビルにはガラスやテラゾータイルなど反射性の高い建材が使用されています。これは意匠性には優れていますが、拡声の面から見た場合、音の反射(残響)が多く、明瞭な放送を行うには非常に難しい環境でした。そこで設計段階から、高齢者が聞き取りにくいシチュエーションを想定し、音圧分布シミュレーションを重ねることで、どの場所でも過不足のない均一な音量で拡声できるようにスピーカーを配置しています。他にも、チェックインカウンター付近において利用者で混み合う時間帯には、拡声音が騒音に埋もれてしまい、フライト情報を聞き逃す危険性もあります。それに対してはデジタルアンビエントノイズコントローラー〈 DP-L2 〉が周辺の騒音を検知して、騒音が大きくなれば音量を上げ、通常のレベルの騒音に戻れば音量も元に戻すようにしています。つまり、周囲騒音の変動に応じて拡声音量を自動的に制御し、いつも適正な音量で放送を流すことができます。残響の多い空間への対応については、デジタルオーディオプロセッサー〈 DP-K1 〉のARC(自動共鳴抑制)機能を使用して、共鳴の少ない『聞き取りやすい』音質になるよう調整しています。
また、アナウンス卓ではタッチパネル画面を使って簡単に放送回線の選択を行えます。さらに、マイク放送だけでなく、メッセージ放送音源の録音~放送スケジュールの構築~実施までを一貫して行うことも可能。また、各航空会社様からアナウンスする放送端末には、カウンターレピーター(特注対応品)を採用。アナウンス放送の高音質化はもちろん、一般のリモートマイクと比べてコンパクトなため、カウンター上の省スペース化にも役立っています。

  • アナウンス卓
    放送回線の選択はタッチパネル画面で行え、高い操作性を有しています。
    また、メッセージ放送音源の録音、放送スケジュールの構築から実施まで、一貫して行うことができます。
  • カウンターレピーター
    各航空会社様からアナウンス放送を行う際に使用します。コンパクトなので、カウンター上でもスッキリ収まります。

インタビュー記事

「実際に運用して、はじめて見えてくるものもある。
それに気づき、改善することでより満足いただける施設にしていきたい」

東京国際空港ターミナル株式会社

施設部 シニアマネジャー 山村 史郎 氏

—実際に運用されてみていかがですか?

非常放送も旅客案内放送も、特に問題ない状態にあると考えています。
個々に見ると、まず旅客案内放送では、館内のフライト情報と連動しながら適宜必要な情報を自動で流す仕組みが、旅客サービスも含めて重宝しています。また、各放送端末においても簡単な操作でマイクアナウンスできる点も便利なようです。非常放送についても、先般行われた、非常訓練の場面においても問題なく作動していたので、心配はしていません。

—設備使用者様のご感想についてお聞かせください。

今回、アナウンス卓の機能の一つとして、乗客へのサービス向上を意図して、放送ブースを作ってもらっています。本来は、その中でメッセージ用に所定のアナウンスを吹き込むための環境なのですが、そこをコンシェルジュがアナウンスの訓練に利用しています。音声を録音して、自分で聞き直して、ダメなところは修正することで、アナウンススキルの向上に努めています。当初は想定していなかったのですが、この使い方が意外と好評のようです。

—今後のご予定は?

様々な運用を想定してシステムを構築してはいますが、実際にご使用いただくことで新たなご要望や現運用における改善点が見えてくるかと思いますので、それらに臨機応変に対応していきたいと考えています。

東京国際空港ターミナル株式会社の概要

2010年10月21日、欧米や東アジアへのゲートウェイとして生まれ変わった羽田空港国際線旅客ターミナル。
東京国際空港ターミナル株式会社は、羽田空港国際線旅客ターミナルにおけるサービスを提供されています。国籍も異なるさまざまな利用者様への丁寧なコンシェルジュサービスや、コンパクトで使いやすい動線設計など、徹底したCSサービスを実践されています。

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