道路を広げるだけではない。ライブ映像で車の集中を分散する、熱海市の渋滞対策。
〜タウンレコーダー遠隔見守りサービスが支える、新しい道路情報インフラ〜
静岡県熱海市では、観光シーズンや大型連休に駅周辺の道路が混み合い、車の集中による交通渋滞が慢性的な課題となっていました。
市はこの課題に対し、道路整備に頼らず、ライブ配信で道路の混雑を伝える『ソフト施策』を選択。実証実験では、YouTubeのライブ配信が計13万回超の視聴、累計5万9,000人以上に利用されるなど、その効果は数字でも実証されています。
そこで採用されたのが、TOAの「タウンレコーダー遠隔見守りサービス」です。
温泉地として国内外から多くの人が訪れる熱海市では、観光客の移動と住民の日常が、限られた駅周辺の道路空間で交錯します。特にホテルのチェックイン・チェックアウトが重なる時間帯は渋滞が起こりやすく、市民生活や公共交通の動きを滞らせていました。
熱海市が向き合ったのは、目の前の混雑を解消することではなく、出かける前に道路の状況を把握できる仕組みを整え、車の集中そのものを分散させていくことでした。
その答えとして選んだのが、道路整備に頼らない「ソフト面での対策」です。混雑の様子をライブ配信で伝え、ドライバー自身が渋滞のピークを避けて動ける環境を整えました。実証実験で多くの市民や観光客に利用されたことが、この対策の有効性を裏付けています。
実証実験ではライブ配信の有効性が確認される一方、通信回線の不調で配信が途切れた際の復旧対応が課題となりました。本格導入ではTOAの「タウンレコーダー遠隔見守りサービス」を採用し、安定した配信を実現しています。
令和8年5月の常設化ではカメラを4台から5台へ増設。インフラ整備に頼らないソフト面の対策として、渋滞回避の仕組みづくりに貢献しています。
この仕組みにより、観光客の快適な滞在と、市民の穏やかな暮らしの両立が図られました。
納入品
タウンレコーダー遠隔見守りサービス
納入時期
2026年5月(常設化)
「道路の混み具合を、カメラの映像でそのまま見られる。
渋滞を避ける『判断材料』を、市民と観光客の皆様にお届けしたい。」
静岡県熱海市 観光建設部 観光経済課
課長 中島 浩太郎 様
中島 様
熱海駅周辺では、観光シーズンや土日・祝日を中心に交通渋滞が発生していました。駐車場の混雑状況が分からないまま駅周辺に車が集中し、空いている駐車場を探す「うろつき車両」が、さらに渋滞を招く状況にありました。
道路や駐車スペースが限られる一方、観光客の車、送迎車、バス、タクシー、歩行者が狭い範囲に集中するため、道路整備だけでなく、混雑情報を提供し、車の集中を分散させるソフト面での対策が課題でした。
中島 様
令和6年に熱海駅周辺へ調査用カメラを設置し、交通量や車両速度、渋滞の発生状況などを調査しました。その結果として見えてきたのが、リアルタイムの道路情報を届けて混雑する時間や場所を避けてもらう対策の必要性です。
そこで昨年8月、4か所の映像をYouTubeで24時間配信する実証実験を開始。当初の予定は8月の1か月間でしたが、好意的な反応が多く、9月末まで延長して実施しました。4台合計の総視聴回数は13万回を超え、累計視聴者数は5万9,000人以上にのぼりました。
中島 様
通信回線の不具合により、まれにYouTubeのライブ配信が停止してしまうことがありました。土日や祝日であっても配信が止まれば担当職員が対応に追われるケースがあり、運用にかかる負荷に苦慮していた部分がありました。
ただ、TOAのシステムへ切り替えてからは不具合が一切発生しておらず、安定した運用が実現しています。
中島 様
まず、市民の皆様や観光事業者の方々から大変好評をいただいたことが挙げられます。実証実験中の利用者アンケートでも、約9割の方が「外出に役立った」と回答しており、リアルタイムの道路情報が行動判断に有効であることを確認できました。
実際、定量的に測定できているわけではありませんが、道路状況を事前に確認できることにより、一定の混雑緩和ができていると我々としても整理しています。これらの点が、本格導入の判断につながりました。
中島 様
実証実験にあたっては、道路担当部署が主導し、国のオーバーツーリズム対策補助金を活用しました。
本格導入にあたっては、混雑の主な要因が観光客の増加にあることから観光経済課が担当し、令和7年4月から導入した「宿泊税(観光財源)」を充当しています。1泊200円の宿泊税は、年間300万人超の宿泊者により年間6億円超の財源規模となります。こうした観光財源を、地域の課題解決にしっかりと還元しています。
中島 様
アンケートでは約9割が「外出に役立った」と回答し、「配信を継続してほしい」「さらに増設してほしい」という回答も9割超に達しています。「家族を駅へ送迎する時間の目安になる」「観光シーズンの通勤時間の計算に活用できる」といった具体的な声もいただきました。想定外の効果として、天候などで鉄道が運休した際に視聴数が急増し、駅周辺の滞留状況をリアルタイムで確認できるツールとしても役立っています。
中島 様
ホテルや旅館の送迎バスの運転手がカメラ映像を活用し、従来の最短ルート(右折)から迂回ルート(左折)へ変更する様子を確認できました。こうした現場の方々の判断が、実際の渋滞緩和につながっていると実感しています。
中島 様
常設化に当たり、カメラを実証実験時の4台から5台に増設しました。さらに今年度中には10台への増設を検討しています。今後は、花火大会などのイベント情報や駐車場の満空情報と連携させ、より分かりやすい渋滞回避情報を提供していきたいと考えています。
中島 様
観光客が特定の駅や駐車場、観光施設に集中する地域では、十分に活用できる仕組みだと思います。大規模な道路整備には時間と費用がかかりますが、ライブ映像によるソフト対策であれば、比較的早く交通状況の改善につながるはずです。今後も地域住民の穏やかな暮らしと、観光客の快適な滞在が両立できるまちづくりを進めていきたいと考えています。
タウンレコーダーを熱海駅周辺の5か所に設置。
駅前や交差点の道路状況を撮影し、ライブ映像として公開している。
LTE通信機能を内蔵。24時間のライブ配信に対応し、出かける前の渋滞回避をサポート。
映像はスマホやパソコンから、YouTubeでいつでも閲覧可能。
熱海市のHPでは、5か所の映像を同じページで確認できます。
https://www.city.atami.lg.jp/kurashi/douro/1000929/1017443.html
熱海市道路状況公式チャンネル(YouTube)
https://www.youtube.com/@atamicity_live_camera/streams
熱海市の概要
静岡県東部に位置し、相模湾に面した温泉観光都市。熱海温泉や熱海海上花火大会、初島など多彩な観光資源を持ち、年間300万人を超える宿泊者が訪れる国内有数の観光地です。
市は令和7年4月から宿泊税を導入し、観光財源を観光施策や地域課題の解決に還元しながら、観光と暮らしが両立する持続可能なまちづくりを推進しています。
DATA
熱海市
https://www.city.atami.lg.jp/