インタビュー3
子ども達へ 心掛けていたこと、今伝えたいこと

ハマー:
この事業はこれからを担っていく世代に向けて、音の企業としてできることを、ワークショップという形で伝えようとしています。子ども達に対して心掛けていたことを教えてください。
トモ:
僕の場合は余裕がなくて、子ども達の表情を見ようとは思ってるんですけど、それが特に最初の頃はキャッチできなかったんですね。オーケストラの公演ではお客さんの表情は見ることがないんですけど、このワークショップでは間近で子ども達の反応が見られるので、楽しんでくれているかだんだんと意識するようになっていきました。
ハマー:
ダンサーさんが踊りながら、子ども達の輪の中にバッと入って行ったりするじゃないですか。ダンサーのお二人は入っていくときに思うところはありましたか?
ミーコ:
積極的に入って行くんですけど、本当に嬉しいと思っているのか、怖いって思われていないかって毎回考えていましたね。本当に嫌な子に向かっていったら良くないことしか起こらないと思うので、その瞬間の感触は大事にしていました。
サエ:
最後の「自由に表現して」というところにどう持っていくかは、結構ずーっと課題でしたね。どうやったら子ども達が自由に自分を表現できるように持っていけるか。「自由に」って大人でも難しいじゃないですか。みんなで話し合いながら変えていき、最終的には良くなっていったような気がします。司会のちょっとした言葉や、ダンスでの誘導の仕方、音楽のこの音を目立たせるというように、ほんの少しの工夫で、この前より自然とみんなが自由になっている気がするということもありました。
ハマー:
演奏される曲の中でも、子ども達にこう感じて欲しいから変えたというような部分もあったのでしょうか?
サエ:
それはその時のアドリブですね。毎回、出会う子どもはちがうので「今日はこの音を出した方が良さそう」っていうのが、メンバーそれぞれから出てくるという感じです。
トモ:
打楽器の音量でびっくりさせた方が良いのか、それとも気をつけて丁寧に入った方が良いのかとか、それは子どもたちの反応を見ながら、先を想像しながら音を出していました。
メリ:
私は、サエさんも挙げていた「自由に」と「音楽を聴く」「一体感を感じる」の3つについて、振り返りの会でよく話していたように記憶しています。自由に動くには、自分の体を知る必要があります。頭で考える間もなく体が反応するように動物の名前をどんどんあげて、その動物になってみる中で自分なりの動きを発見してもらえるように促していました。そしたら先生から「『自由に』っていうのは難しいけど、いろんな動物の名前を挙げていった中で遊んでいく流れは良かった」という感想をいただきました。また、音楽を聴く時間も、子ども達は集中出来るよう座り、照明を切り替えて司会の声のトーンも変えて、「ここから場面が変わりますよ」という導入を作りました。1つずつこだわりを持って変えて、しっかり提示していくということをやっていたなと思います。
ハマー:
僕が印象的だったところは、ヤマジャンベがカホンの説明をしてくれるところです。その説明の時に、子ども達がグッと前に寄ってきて、カホンの音を聴かせるという場面がとても好きなんです。毎回その話し方、演奏も変わっていたから、その場での子どもの雰囲気や反応によって変えているんだなって思っていました。
ヤマ:
さっき話した子ども達のアンケート分析では、感情の言葉だけじゃなくて個人名が出てくるかも見るんですよね。「サエマリンバが楽しかった」「ミーコさんと踊った」みたいな(笑)僕はここで自分の名前が上位にくることを目指していたので、自分の名前を連呼したり、楽器の紹介も、「カホン」という言葉1つを覚えてくれたら良いっていうぐらいに喋ったりしていたんですね。子ども達の反応を見て、「スペイン語でカホンって言うんだけど、日本語では箱って意味なんだよ」っていう説明の「間」も確かに変えていました。パッといく時もあればすごく溜めて言う時もあるし。どのくらいの「間」でいくと一番子ども達の反応が良いのかを、いろいろ実験していました。演奏も食い付いてくる子に関しては、大きい音を鳴らしたり、とにかく手を早く動かすっていう。そういうところも個人的にはすごく楽しんでいましたね。
メリ:
アンケート分析では、個人の名前が出てくるとき、それが単体で出ているのか、それともほかの個人名も連なって出ているのかなども調べていました。すると、年々個人名が連なって出てきていたり、チーム名と個人名が出てくることなどが増えてきました。この結果は、チームになるためにそれぞれの分担があるっていうことだったのではと思います。
ミーコ:
ワークショップが終わった後に私達の控室に来て、「絵を描いたから貰って」って言う子ども達がいました。毎回印象に残る公演ばかりで、良い思い出しかないですね。
ハマー:
片付けが終わった後にまた体育館に戻ってきて手を振ってくれたり、僕達が学校から帰る時に「バイバイ!」って言ってくれたりとか、そういうことが毎回あるんですよね。子ども達にとってもそれだけ心に残ったんだろうと思います。
   NPO法人子どもとアーティストの出会いのスタッフからは「ワークショップで演奏される曲『run』が、年度ごとにマイナーチェンジしていたのが気になっていました。すごく大人っぽい『run』もあって、こんな音楽を子どものときに聞けるって贅沢だなぁと思いました」という感想も出ています。
ヤマ:
全体を通してアニマルの音楽はサエさんが作曲してくれたんです。僕は、サエさんの0から1を生み出すところをすごく尊敬しています。一番覚えていることが、この事業が始まる前に3人で「どうする?」と話し合っていた、0のころのミーティング。サエさんの出てくるフレーズにトモジャンベが乗って、じゃあ僕もこうしよう・・・・・と作っていたあの感じが未だに忘れられないです。0を1にするところを一緒に体験させてもらえました。
ハマー:
このワークショップのテーマはアフリカじゃないですか。アフリカって言われても、最初は子ども達の心にスッと入ってくるものではないと思うんです。でも、音楽のリズムやダンスを見ていたら、「これがアフリカなんだ」ってスッと馴染んできて最後には「これがアフリカで、自由にして良いんだ」というところまでいけてしまうんですよね。
ヤマ:
まず動物を何にするかっていうところからでしたから(笑)あの時間は本当に楽しかったな〜。
ミーコ:
私達もメリさんのお家を借りて、2人で沢山やりましたね。
メリ:
そうですね。踊りも最初のころとは違いますね。
ミーコ:
違いますね。鳥の動きは結構変わっていったかな。
メリ:
曲の速さを変えてもらうこともありました。
ミーコ:
一番良いテンポを毎回探っていましたね。
メリ:
演奏者も、後半で前に出るために吊り帯をして太鼓を下げたり、鳥の動きでは足の振り付けを踊ったり、一緒に出来ることを増やしていきましたね。
サエ:
一緒に踊りながら演奏するとは思ってなかったですね。
ミーコ:
それも最後の方は当たり前になっていましたよね(笑)
全員:
そうそうそう。
メリ:
あと、営業さんの車に乗せてもらって学校に行くことがあるんですが、そこでその地域の情報をもらって、地域の言葉を入れたワークをその場で考えて作ったりしていましたね。「これを入れたら子ども達が反応してくれるかな」って。
ハマー:
どんなことをされていたんですか?
サエ:
刀で斬る動作とか入れなかった?武士みたいな・・・・・。なぜだったか忘れたけど(笑)
ミーコ:
やっていた気がしますね。宇治市の小学校の時はお茶を飲む動きを入れてましたよね。
メリ:
もっとマニアックなこともやっていた気がするんだけどな・・・・・。
ハマー:
どじょうすくいなどもあったのでは?
サエ:
安来(鳥取県)ね!
ハマー:
その地域の子ども達とどれだけ仲良くなりたいのかが、それだけで分かりますね。
メリ:
あと、アンケートや感想は毎回必ず読んでいたということをこれまで参加してくれた子ども達に伝えたいです。そこにはいろんな言葉があって、読みにくい字もあるんですけど、一生懸命書いてくれたんだなと感じました。絵を描いてくれたアンケートも見ていたし、帰り際に貰ったプレゼントは今も持っています。また、この前TOAの担当者さんが、「良い音を作ることと、照明を見せることを体育館という広い空間でやろうとするのは大変。でも、外からきた大人達が真剣に工夫しているところを見て、子ども自身の今ある半径5mの世界が少しでも広がるきっかけになれば良い」とおっしゃっていました。そういうところが子ども達に伝わっていたらいいなと思います。

写真4


>>おわりに