インタビュー2
企業の社会貢献事業としての取り組みー楽しさ、難しさ、発見

ハマー:
TMWは、音の企業であるTOAの社会貢献事業(CSR事業)の1つですが、普段、企業とこんなに長い期間一緒にワークショップを続けるということは、なかなか無いことだと思います。企業との協働のなかでの楽しさや難しさ、発見などあれば教えてください。
ヤマ:
僕が一番びっくりしたことが、2年目の最初のリハーサルです。僕らは楽器を準備して「さあ練習を始めようか」という流れが普通なんですけど、まず、全員で机を並べて囲んで、担当の社員さんが「資料を配ります」というところから始まり、「去年、実施した学校で子ども達にアンケートを取りました。すると、こういったワードが出てきました」「各学校でこういうデータが出ています」と説明され、資料と照らし合わせながら、「ここの学校はポジティブなワードが多かったね」「ここの学校は少なかったね。何でだろう?」と、そういう話し合いをしたんですね。僕は経験したことがなくてびっくりしたし、勉強になりました。次のリハーサルをするにあたって、「じゃあ、ここはどうしたら良いのか」「どうしたら、もっと子ども達は喜ぶのか」「こことここの学校の反応の差は何だったのか」といったところも、みんなで掘り起こして議論したことは、すごく楽しかったですね。
ツジ:
これは、私も組織として取り組んでいる感じがして、会社員をやったことがないのですが「すごく会社っぽい!」と思いました(笑)
ハマー:
僕も、アンケート分析を手伝っていました。自由記述のアンケートにどういった感情の言葉が出てくるかを分析するんですが、ポジティブな「楽しかった」や「面白かった」という言葉だけでなく「恥ずかしかった」「びっくりした」という言葉もありました。この分析を年々続けると「楽しかった」という言葉が増えていて、高水準でプログラムのクオリティーを維持できていることがわかるんですよね。毎年この話し合いをしてからリハーサルをするというところが、これだけ継続できた理由でもあるのでしょうね。
ミーコ:
企業側のスタッフとして参加してくださる社員の方々も、一緒に楽しんでもらえたというのは嬉しかったです。そもそも社会貢献事業を、こんな大きな企業がやっていることを知らずに参加したので、最初はすごく新鮮で、自分は何ができるのかなと考えるところからでしたけど、発見は数えきれないほどあったような気がします。
サエ:
各公演の後に、学校の先生も交えて行っていた振り返りの会も、企業じゃないとできないことだと思うんですね。アーティストだけのチームだったら、公演後、学校の先生にある程度の時間をもらうこと自体ができないんじゃないかなと思います。あの会はすごく意味があることですよね。あれだけ毎回、反省点を見つけて改革していくことはほとんどないので、私たちもそこに乗っかりたい気持ちになりました。
ハマー:
照明や音響のセットなどすべて片付けた後に、振り返りの会をしていたんですよね。これも継続していく上で大事だし、普段の子ども達を一番近くで見ている先生達の言葉に一番励まされ、勉強にもなりました。会にはTOAの営業さんも参加してくださって「子ども達の目がキラキラしていた」というような感想を聞くことも楽しみでした。
メリ:
下準備をきちんとしてもらっていることも、とても大きかったと思います。先生と子ども達がどんなワークショップなのか知っている、その状態で本番に入っていけることが、とても助かっていました。ワークショップに関わっている方々がさまざまな調整をしてくださったからこそ、子ども達と出会う日が迎えられていたと感じます。
ハマー:
やっぱり他のワークショップとは違いますか?
メリ:
そうですね。顔が見えない人達が動いてくれているということは、やっぱり企業という組織が主催する事業だからではないかと思います。また、社員の方が「自分の子どものいる学校でも」とワークショップを勧めてくださったり、ホールで公演をした時に家族で参加されたりすることがありました。そういった時、改めてこの取り組みを応援してもらっているんだとやり甲斐を感じることができ、社員の方も仕事として誇りに思っておられるということが伝わってきました。
ハマー:
営業の方のお話、僕も聞いたことがあります。TMWをやっているからこそ、その方は学校に行く機会が増えた、学校でスピーカーがどのように使われているかを理解するための接点が持てたとおっしゃっていました。TOAの理念の根幹と働いている方々の想いが繋がった瞬間、また別のやり甲斐が僕自身もあったなと思いました。
ハマー:
TMWならではというところはありますか?
サエ:
分業がすごく出来ていると思うんですね。ダンサーと打楽器奏者と音響・照明のスタッフさんがそれぞれいるっていう。普段のアンサンブルの学校公演で行く時よりも人数が多いんです。時には自分だけで子ども達の様子を察知して、自分のパフォーマンスに反映しなくてはいけないと思う公演もあるんですけど、アニマルでは、「ここは彼がこういうところを見てくれる、やってくれてる」「ここは彼女に任せていい」などがあるので冷静になれるんですよね。次にどういうことをやってくれるのか楽しみっていう、期待がもてるチームだなと思いました。チームで分業がすごく出来ていることが、ここしかないワークショップだなと思います。
ハマー:
それは長年やっているからというのもあるんでしょうか?
サエ:
もちろんあると思いますけど、最初から、それぞれが自分でそういうことを無意識かもしれないけど、分かって動いていたんじゃないかなと思います。

写真3


>>インタビュー3 子ども達へ 心掛けていたこと、今伝えたいこと