滋賀県彦根市 様

「滋賀県彦根市」のイメージ画像

市内の小中学校を含む64箇所の施設に緊急地震速報を報せるIP告知放送システム。

概要

彦根市の緊急地震速報(※)を、IPネットワークを利用して市内の施設に報知音声を一斉配信するシステムとして、TOAのIP告知放送システムが導入されています。高度利用者向け緊急地震速報を、彦根市役所 総務部 総務課 危機管理室からIPネットワークを利用して市内の24小中学校を含む64箇所の施設を結び、校内放送・館内放送などにより地震の発生を報せ、地震災害から市民の安全を守るシステムです。

彦根市の概要

滋賀県東北部の琵琶湖に面している中核都市。戦国時代に石田三成が佐和山城主となってから次第に繁栄し、その後、関ヶ原の戦功により井伊直政が彦根の地に封ぜられ、その子直孝が彦根城を築城してから彦根藩35万石の城下町として発展する。
2007年の「国宝・彦根城築城400年祭」のマスコットキャラクターである「ひこにゃん」は全国的な人気となり、400年祭終了後も彦根市のキャラクターとしてイベント等で活躍している。
毎年7月に彦根市で開催される「鳥人間コンテスト選手権大会」も有名なイベントとして知られている。

納入情報

納入先 滋賀県彦根市 様
納入品 IP告知放送システム、その他市役所や公共施設の放送設備
納入時期 平成22年1月完成
採用背景 高度利用者向け緊急地震速報を、迅速にできるだけ多くの施設に音声配信するシステムを、コストを抑えて構築できることが評価され、導入に至りました。

課題と解決のポイント

課題

  • 危機管理室で受信した高度利用者向け緊急地震速報から報知音声を市内の施設に迅速に流したい
  • 緊急地震速報報知音声一斉配信システムを少ない財政負担で構築したい
  • 今後の拡張性も含めて将来性のあるシステムを構築したい

解決のポイント

  • IPネットワークを利用して、IP告知放送システムにより迅速に起動する緊急地震速報伝達システムを構築
  • 既存のIPネットワークと施設内の放送設備を有効活用することにより、導入コストを抑制
  • 将来、情報の双方向性を生かせるIPネットワークを核としたシステムを構築

詳細

背景

子どもたちを地震被害から守りたい
広域避難場所である小中学校を拠点に緊急地震速報を広く伝達し、減災につながるシステムを作りたい

彦根市では、平成21年4月に危機管理体制を強化するため、総務課内に危機管理室を設置し、窓口を一元化されました。具体的な災害対策としては、エフエムひこね(彦根ローカルFM http://www.fmhikone.jp/)による緊急放送や、総合情報配信システムによるメール配信を行っています。地震に備える情報の提供は一刻を争うため、高度利用者向けの緊急地震速報などを活用して市民に迅速に情報を提供する必要があります。また、一般向けの緊急地震速報はテレビやラジオ、携帯電話などで知らされますが、それでは学校で授業を受けている子どもたちには伝達できません。子どもたちを地震の被害から優先的に守りたい、また広域避難場所に指定されている小中学校をはじめとする市内の公共施設に緊急地震速報報知音声を広く配信したいことから、子どもたちや市民に伝達するような仕組みの構築を検討するようになりました。

(※)緊急地震速報とは

緊急地震速報とは、気象庁が地震の発生直後の観測データを解析して推定した震源や地震の規模や、予測した各地の震度を広く国民に報せるというもので、2種類の方式がある。
1つは一般のテレビやラジオで速報が流される「一般向け」。最大震度が5弱以上と推定された場合に地震発生時刻や、強い揺れ(震度5以上)が予測される地域および震度4以上が推定される地域名などが配信される。震度5弱以上の揺れになると顕著な被害が生じるため、事前の対処や避難などを促すのが目的。
もう1つは電気・ガス・水道・鉄道などのライフラインを供給する企業や病院、官公庁などでの活用が想定されている「高度利用者向け」。「一般向け」は複数地点で観測されてから原則1回の発表なのに対し、「高度利用者向け」は地震が発生したことをいち早く報せるために、最初に観測された直後から複数回に渡って発表される。第1報は迅速性を優先し、その後の第2報、第3報・・・最終報と情報を更新して、徐々に情報の精度が高まっていく。専用の受信装置で受信して予測震度の演算を行ない、設定震度を超えた場合に発報して放送設備と連動させて音声報知などを行なう。

課題

市内の多くの施設により早く緊急地震速報を伝達できるシステムを導入コストを抑えて構築したい

導入にあたっては、市役所の危機管理室内にある緊急地震速報受信装置から、いかに迅速に緊急地震速報を市内の小中学校をはじめとする施設に報せるかがポイントでした。強い揺れが来ることを1秒でも早く子どもたちや市民に報せることで、安全確保の行動を促し、地震被害を最小限にとどめることができます。また、限られた予算で実現するためにも、導入コストを抑えながら市民に対して緊急地震速報を早く伝えるための最善のシステムを考える必要がありました。

解決策

既設のIPネットワークと施設内の放送設備を活用できるIP告知放送システムで導入コストを低減
小中学校を含むより多くの施設に、緊急地震速報報知音声を一斉配信

彦根市では、小中学校に導入している情報通信ネットワーク「ひこねっと」がありました。この「ひこねっと」を音声伝送路として利用できるIP告知放送システムであればシステムが起動するまでの時間ロスが少なく、地震到達までの猶予時間を最大限に確保できます。また、IP告知放送システムは小中学校の校内放送設備へ接続して伝送した音声を報知できます。なお、同時期に別の部門が市内施設を光ネットワークで結ぶ取り組みを行っており、小中学校以外の市の施設にも光ネットワークを構築することが決定したことで、当初の予定よりも多くの施設へ緊急地震速報報知音声の一斉配信を行なうことになりました。
地震到達までの猶予時間を最大限確保するために速やかに起動し緊急地震速報を迅速に伝達できること、既存のネットワーク環境と各施設の放送設備を利用することでコストを抑えて報知システムを構築できるということなどが決め手となり、IPネットワークを使った緊急地震速報報知音声一斉配信システムの導入が決定されました。

■彦根市 総務部 総務課 危機管理室(放送送信側)

緊急地震速報受信装置、緊急地震速報報知音声が収録されたデジタルアナウンスマシン、音声信号をIPネットワーク経由で各施設へ伝送するIP告知送信機NX-220CT、各施設と通話を行なうIP告知端末NX-220HU、IP告知放送システム操作ソフトウェアがインストールされたPC、放送用マイクロホンなどが設置されています。ここからIPネットワークを経由して市内64箇所の全施設または各施設個別に館内放送を行うことや、施設から危機管理室を呼び出して通話することができます。
また、通信状況やエラー状況が容易に確認できます。通信が分断された場合には表示灯が作動し、操作ソフトウェア画面で該当先を確認できます。防災無線などにはない、IPネットワークを活用したシステムならではの機能です。

  • 緊急地震速報受信装置、デジタルアナウンスマシン、IP告知送信機、IP告知端末などが納められたラック。
    緊急地震速報受信装置、デジタルアナウンスマシン、IP告知送信機、IP告知端末などが納められたラック。
    緊急地震速報受信装置の演算結果が「予測震度5弱以上」の場合に、緊急地震速報報知音声を全施設へ自動配信します。
  • IP告知端末、IP告知放送システム操作ソフトウェアと緊急地震速報表示ソフトウェアをインストールしたPC、放送用マイクロホン、表示灯。
    IP告知端末、IP告知放送システム操作ソフトウェアと緊急地震速報表示ソフトウェアをインストールしたPC、放送用マイクロホン、表示灯。
    各施設へ個別にマイク放送を行なったり、施設からの呼び出しに応答して通話することができます。
    各施設のIP告知端末との通信が分断されると、表示灯が作動します。
    放送用マイクロホンの右横にあるのは、避難訓練用音声再生用のボタンで、緊急地震速報が報知された場合の避難訓練などの際に利用されます。
  • 警報装置と回転灯。
    警報装置と回転灯。緊急地震速報受信装置の演算結果が「予測震度3以上」の場合にアラームが鳴るとともに、回転灯が作動します。

■彦根市立 城東小学校(放送受信側)

危機管理室より配信された緊急地震速報報知音声は、IPネットワークを通じて城東小学校を含む市内64箇所の施設に設置されたIP告知端末で受信され、各施設の校内放送・館内放送により緊急地震速報が緊急放送されるしくみになっています。

  • 城東小学校の職員室内にあるIP告知端末と非常用放送設備。
    城東小学校の職員室内にあるIP告知端末と非常用放送設備。
    危機管理室のIP告知送信機から配信された緊急地震速報報知音声やマイク放送音声は、それを受信したIP告知端末を通じて非常用放送設備を起動して校内へ放送されます。

システム図

  • システム図

インタビュー記事

インタビュー実施日:2011年1月21日
※所属と職名はインタビュー当時のものです。

「既設のネットワークを活用して、多くの施設への一斉配信システムが低コストで構築できました。」

彦根市 総務部 危機管理監

横井 康素 氏

「今後は音声通話による危機管理室と市の施設との連絡なども検討していきます。」

彦根市 総務部 総務課 危機管理室

副主査 浅原 祐二 氏

緊急地震速報の音声報知にIPネットワークを活用した放送システムを採用したのはなぜですか?

横井氏

地震が到達するまでにより多くの猶予時間を確保するために、より早く確実に緊急地震速報を伝達すること、既存のネットワーク環境や施設内の放送設備を利用してより低いコストでシステムを構築することができること、緊急地震速報報知音声の配信だけでなく簡単な操作で危機管理室と各施設間での音声通話ができること、通信状況が確認でき保守管理が容易なことなどを総合的に判断し、IPネットワークを活用した緊急地震速報報知音声の配信を行うことを決定しました。
IPネットワークを使ったシステムは拡張性がある割に、ハード的にはそれほど大きな投資は必要ありません。大きな投資をしなくても、時代の動きにあわせてよりよいものにバージョンアップしたり、拡張することができる点も大きかったと考えています。

緊急地震速報報知音声一斉配信システムの構築で苦労された点はどこですか?

浅原氏

当時は他の自治体の導入事例が少なかったので、全てにおいてゼロから考えなければならないことが多く、工事を始めてから課題がでてくることもありました。また、受信端末を設置した64施設はさまざまで全て同じ放送設備やシステムではなかったため、個別の確認作業が発生しました。そのため工期と運用試験を含め、約半年もの時間がかかりました。
全体の一斉試験実施なども難しかったですね。一斉配信時の音量についても、施設の環境によって周囲の雑音の有無が情報伝達に影響するため、調整するのに苦労しました。

期待される効果について教えてください。

浅原氏

平成22年4月1日より緊急地震速報システムの運用を始めていますが、導入している施設では本システムを使った防災訓練を年に1回以上行っています。参加人数は累計で7,000人を越えました。
IP告知放送システムを利用して危機管理室と端末との音声通話が可能です。今後は緊急地震速報報知音声を配信した後で状況を確認したり、有事の情報収集の手段として利用していきたいと考えています。とくに小中学校は緊急時の広域避難場所にもなるので、ボタンを押すだけの簡単操作で音声通話ができることは、非常に便利です。

今後の展開について教えてください。

横井氏

現在は市内64施設に緊急地震速報報知音声を一斉配信できますが、まだ設備を導入できていない公共施設は光ケーブルのインフラが整っていません。まずは今よりも広範囲に緊急地震速報を報知できるように導入施設の拡大に努めていきたいと考えています。
また、平成23年度より導入が決定している「J-ALERT」もIP告知放送システムを利用して情報伝達できるように、現在準備を進めています。「J-ALERT」が導入されると、地震以外の台風や気象情報などの多岐に渡る情報伝達が可能になります。今後も市民の安全を守るため、これらのシステムを利用して危機管理を積極的に推進していきます。

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