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特集 倉敷市緊急情報提供システム(IPv6方式)

既成概念にとらわれることなく、自由な発想から生まれたシステムです。
倉敷市総務局 防災危機管理室 課長主幹 梶田 英司(かじた えいじ)氏
阪神・淡路大震災でも、光ファイバー網の安定性は実証されています。
倉敷市まちづくり部 情報政策課 主幹 西川 俊作(にしかわ しゅんさく)氏

防災行政無線の整備において、有線IPネットワークに着目された理由は?

梶田氏
コストと機能のバランスですね。従来の防災行政無線の整備にかかる概算予算は、一方通行の無線システムにしてはかかりすぎだと思いました。これだけデジタルが当たり前になっている現代社会において、まったくデジタルのメリットが生かされていない。ならばデジタルの同報系を整備するために、倉敷市が持っている光ファイバーネットワークを利用しない手はない、ということで研究をしはじめました。
西川氏
災害時には、音声だけ届けることができても、現地から返事が来ないでは困ります。より的確な情報を現場に近いところから収集して、現場に近いところから発信するためには、従来の無線帯域ではデータ量に制限があり、不可能でした。また、災害が起こったときには、電話回線はパンクしてしまいます。それに対して倉敷市のIP網は十分なキャパシティを確保しているため、話し中になることはまずないかと思います。

他では例のなかった有線ネットワークシステムを採用することに抵抗はありませんでしたか?

梶田氏
当然、不安はありました。個人としてはIPを使ったシステムを構築したいと考えていましたが、周囲には「できない」という意見が多かったですね。しかし、私はある意味、ネットワークについては素人だったため、「できるのでは」と最初は漠然と考えました。当時、倉敷市では自前で持っている光ファイバーネットワークで総務省のIPv6実証実験を行っていたこともあって、上層部にIPやネットワークに関する知識と理解があったことも幸いし、その事業を推進いたしました。
西川氏
ありました。「無線があるのに、なぜ有線を使うのか」とか、いろいろ言われました。有線にも無線にも一長一短があり、完全ではありません。だからこそ、有線と無線のハイブリッド化を進めたのです。通常はよりキャパシティの大きい有線で行い、ダメになったら無線で最低限の放送を行う、と。お互いが補完しあうようなかたちでバランスを見ながら整備を行いました。その点では、阪神・淡路大震災の際、自設のファイバーネットワークを用いたシステムが通信を維持できていたという実例があったことも心強かったです。

平成23年に、ようやく整備が一段落します。ここまできての感想は?

梶田氏
前例もなく、ハードウェアも満足に揃っていない状態で、全くの手探りでやってきました。そのなかでプロジェクトを進める際に市の職員だけで議論を重ねたことが、かえってよかった気がします。最初からどこか一企業に頼っていては、その企業が得意な部分はいいが、不得意な部分の可能性は早い段階で摘まれていたのではないでしょうか。倉敷市はこういったシステムをつくりたい、という理想に対して、倉敷市が持っている、あるいは市内で使える資産、たとえば今回の場合は「かわせみネット」や「FMくらしき」の緊急告知FM放送を活用することなど、既成概念にとらわれることなく自由な発想で進められたことが、コスト面でも完成度の面でもよかったと思います。
西川氏
個人的には、インフラの整備に関してはほとんど終わったかな、と思っています。次は無線とのハイブリッド化ですね。無線と有線が、お互い補完しあいながら優先制御を考えています。たとえば電柱にクルマが突っ込んで線が切れてしまったとき、自動的にIP無線システムを使って補完するようにすることで、日常の業務に支障を来さないシステムを目指しています。大きな投資を行うことなく、可能な限りのバックアップを続けていきたいと考えています。
倉敷市の概要
岡山県の南中央部に位置し、国内有数の工業都市にして、自然と観光にも恵まれた倉敷市。354.72平方キロメートルの広い市域に、人口約48万人、世帯数にして約19万2600世帯が暮らしています。
倉敷川沿いの白壁の町並みが有名な観光地・美観地区がある一方、製造品出荷額4兆円を誇る石油化学コンビナートを有しています。さらに、ブドウやスイートピーの生産でも国内有数の産地であり、ジーンズや畳表といった産業も盛ん、とさまざまな表情を持っています。また、山陽新幹線や山陽自動車道、さらに本州と四国を結ぶ瀬戸大橋と瀬戸大橋線も市内を経由しており、交通と物流の要としても重要な位置を占めています。
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