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サウンドシステム設計の基礎知識

サウンドシステムってなに?

サウンドシステムの機能と役割はひとことでいうと「スピーカーで空気を振るわせて、音声・音楽の情報を聴取者に伝達すること」です。
ハウリングの危険性の有無で使用目的からBGM系と拡声系の2種類に分けることができます。

BGM系サウンドシステム 拡声系サウンドシステム
スピーチ主体のシステム コンサート(SR)システム
店舗空間 スピーチ コンサート

店舗空間を演出したり、喧噪を「※マスキング」したりするための音楽を流す事が主目的。マイクを使用しないためハウリングは起こらない。
※マスキング=騒音をBGMなどの音楽で目立たなくすること。

人間の声を明瞭に拡声するためのもの。
ハウリングへの配慮が必要。

人間の声に加えて、音楽を拡声する。高音から低音まで、広範な音声帯域を大音量かつ音楽的な音色で拡声する。
ハウリングへの配慮が必要。

 


音ラボコラム

 

◎1. 拡声系サウンドシステムのルーツとSR

◎2. 拡声系サウンドシステムに必要な空間の目安は7m

 

サウンドシステムを構成する機器

サウンドシステムの基本的機器構成は、入力から出力へむかって、

  1. 音源機器
    (CD、MD、マイクロホンなど)
  2. ミキサー
    (プリアンプ部)
  3. エフェクター
    (デジタルプロセッサー、イコライザー、リミッターなど)

  4. アンプ
  5. スピーカー

となっています。
それぞれの機器について、その種類や用途を見ていきましょう。

サウンドシステムの基本的機器構成




【1】マイクロホン
マイクロホンの代表的なものには、ダイナミックマイクロホンとコンデンサーマイクロホンがあります。
これらのマイクの特長を比較すると、以下のようになります。

ダイナミックマイクロホン コンデンサーマイクロホン

ダイナミックマイクロホン

コンデンサーマイクロホン

用途:広く拡声、楽器収音
長所:比較的安価で丈夫。電源不要。
短所:構造上、繊細な音の収音は不向き。

用途:レコーディング、測定
長所:繊細な音、微細な音を収音できる。
短所:高額でデリケート。電源が必要。

ダイナミック型マイクロホンの構造

コンデンサ型マイクロホンの構造

 

[マイクロホンの指向性
これらのマイクロホンは、全方向からの音を拾う「無指向性」のものと、特定方向からの音だけを拾うように設計された「単一指向性」というふたつの種類に分けられます。
また単一指向性マイクのうち、特に指向性が強く狙った音をピンポイントで拾うことのできる超指向性タイプのものを、「ガンマイク」と呼ぶことがあります

無指向性
単一指向性
超指向性
特徴:

360°全周に等しく感度をもっている。「バウンダリーマイクロホン」もこの仲間。

用途: 舞台やトークショーの収音、クラシック音楽など室内残響もあわせて収音したい場合など
特徴: マイク正面に最大感度をもち、後方が最低感度。ポーラーパターン(※感度曲線)が心臓の形をしていることから別名を「カーディオイド」型。一般的なマイクとして広く普及している。
用途: 広くPA、SR、スタジオレコーディングなど
特徴: 単一指向性のマイクの特性を極端にしたもの。
極端な指向特性にするため、音響特性を多少犠牲にしているものもあるので音楽用途での使用に注意。
用途: スポーツ中継、舞台上の台詞の収音、報道取材など
ポーラーパターン:無指向性
ポーラーパターン:単一指向性
ポーラーパターン:超指向性
※感度曲線とは…マイクロホンを中心として周囲360度の感度を表示したもの。


【2】ミキサー
一般的なミキサーの役割は、多数の入力機器(マイクや電気楽器、回転機器など)の個別の音量や音質を調整し、混合(ミックス)して、数個のグループにまとめ、各系統のパワーアンプへ送り出すことです。近年では、従来からあるアナログミキサーに加えデジタルミキサーが普及しつつあります(厳密にはアナログデジタル混成型もある)が、一般的にアナログミキサーは構造上すべてのつまみ類が操作パネル上に出ているので慣れた人であれば直感的な操作がしやすく「ライブ=生放送、本番」向き、デジタルミキサーは各種設定(イコライザーや感度レベル、演目)を記憶再現できるので音響に不慣れな人でも簡単に操作ができるなどそれぞれに長所、短所があります。

小型ラックマウント型
中型ラックマウント型
平置 (コンソール) 型
小型ラックマウント型 中型ラックマウント型 平置 (コンソール) 型

特徴:

入出力数も少なく、操作が簡単。
例・マイク入力6、予備入力4、出力3CH程度

ポイント:

音量操作は丸ボリュームで行う

用途:

本番中の音量操作がほとんどないスピーチ主体の集会施設など

特徴:

入出力数は小型のものに比べ若干充実しているが操作性は簡単にしてある。
例・モノ入力6、ステレオ入力4、サブ3、
モノ出力2、ステレオ出力1、録音1程度
映像入出力を制御できる機種もある。
ポイント: 音量操作はスライドボリュームで行う

用途:

本番中の音量操作は必要だが、専任オペレータのいないホテル宴会場やイベントルームなど
特徴:
音楽の録音やコンサート用に設計されたもので、入出力も充実している。
熟練したオペレータが扱うことを前提に操作性も複雑になっている。
ポイント:
音量や音質などの調整作業が細やかにできる
用途:
コンサート、レコーディング、ホール・劇場施設など


【3】エフェクター
エフェクターは、細かい音質調整を行ったり音を加工したりするための機器で、音声の明瞭性や音楽の表現力を向上させるために使用します。
エフェクターにはさまざまな種類がありますが、ここで代表的な機種をご紹介しましょう。

イコライザー
コンプレッサー、リミッター
デジタルプロセッサー
イコライザー コンプレッサー、リミッター デジタルプロセッサー
概要: 周波数特性の補正、つまり音質をコントロールできる機器。
周波数を細かく分割して増減できるグラフィックイコライザーや、周波数が自由に変えられるパラメトリックイコライザーなどがある。
用途: グラフィックイコライザーは瞬時に操作したい場合(ハウリングの抑制)など、パラメトリックイコライザーは細かな音場の補正に
概要: 一定以上の大きな音量が入ってきた場合に自動的にレベルを下げるもの。レベルの抑えかたの違いによって、コンプレッサーとリミッターがあるが、どちらも動作が似ているため、両方の機能を備えている製品が多い。
用途: 突発的な大音量(マイクの落下音やケーブルを抜く際のノイズ等)でスピーカーが破損するのを防いだり、音量のレベル差のある音源を録音する際のレベル合わせなどに
概要: イコライザーやコンプレッサー・リミッター、ディレイなど単機能型エフェクターを、デジタル信号処理技術を駆使してひとつのハードウェアで統合したもの。

用途:

ホール・劇場やホテル宴会場など、様々なエフェクターが数多く必要ではあるが、設置スペースや予算の制約がある場合に


【4】パワーアンプ
学校放送やデパートの呼び出しスピーカーはもちろん、ホームオーディオからスタジオスピーカーまで、スピーカーを駆動するために欠かせないのがパワーアンプ(増幅装置)です。パワーアンプには、2チャンネルの音源を増幅するためのステレオタイプ、サラウンドや多くの系統のスピーカーのための多チャンネルタイプなどがあります。また、アンプには「ハイインピーダンス」「ローインピーダンス」のふたつの仕様がありますが、とくに前者は、アンプからスピーカーまでの配線距離が長い場合やスピーカーの台数が多い場合に対応しやすいように考案されたものです。

ステレオタイプ
多チャンネルタイプ
イコライザー コンプレッサー、リミッター
概要: 増幅部を2CHもつタイプ。
用途: 音源がステレオ音楽の場合などに
概要: 増幅部を複数CHもつタイプ。ステレオタイプと
同等サイズながら4CHの増幅部をもったタイプが代表的。
用途: 機器の設置スペースが手狭な空間で多くの系統のスピーカーを鳴らしたい場合、あるいは「空間演出」を狙って


【5】スピーカー
スピーカーはサウンドシステムの最終段であり、システムの出来を左右する大切な要素です。
具体的には、意匠・内装デザイン、天井高・フロア面積の状況、必要音圧レベルそれぞれについて十分に検討をすすめる必要があります。

ホーンタイプ
再生帯域が狭いのが難点ですが、音響変換効率が良く、コンパクトでリーズナブルなわりに大きな音を出せる利点があります。良く知られた「トランペットスピーカー」もこの仲間です。
トランペットスピーカー
定指向性ホーン
トランペットスピーカー
概要: 音の発生源である「ドライバーユニット」と、発生した音から大きな音を作り出す「ホーン」で構成される。
用途: 広い空間のページング(呼出)
コンポーネントタイプやワンボックスタイプの高音域スピーカー
天井埋込タイプ
意匠的にスピーカーを目立たせたくない空間のほか、適切な分散配置をすれば残響の多い空間で明瞭な拡声システムを構築できます。
一般的なタイプ
ハイパワータイプ
広域拡散タイプ
一般的なタイプ ハイパワータイプ 広域拡散タイプ
概要: 直径10〜16cmほどのスピーカーユニットを使用したもの。フルレンジタイプが主流。
用途: 商業店舗、パーティー会場など比較的天井の低い空間
概要: 一般的なタイプに比べ大音量を出せるようにしたもの。2wayタイプが主流。
用途: ホテル大宴会場、ホール・劇場ロビー、そのほか高天井や吹抜けの空間
概要: 一般的な天井埋込タイプに「拡散器」を付けて広いエリアで均一に拡声サービスできるようにしたもので、直下でもうるさくないソフトな音色が特長。
用途:
商業店舗、大規模複合施設の連絡通路、そのほか天井の低い空間

コラムタイプ
コラムタイプ
教会や集会施設など残響の多い空間での拡声に有効です。
概要:スピーカーユニットを柱(コラム)状に並べることで、狙った方向以外への音放射を抑える工夫が施されたもの。
概要: スピーカーユニットを柱(コラム)状に並べることで、狙った方向以外への音放射を抑える工夫が施されたもの。
用途: 教会ほかスピーチ主体の集会施設

コンポーネントタイプ


コンポーネントタイプ
大型スポーツ施設等で多く採用されています。音の遠達性・カバーエリアの正確さ・設計自由度の高さ等さまざまな利点をもつ反面、設計や調音に熟練したエンジニアリングを必要とするのが難点です。
概要: 高音域用の定指向性ホーンと低音域用ウーハーボックスで構成されたもの。
用途: 野球場、サッカー場、そのほか大型集会施設

ワンボックスタイプ
小型のものは商業店舗のBGMなどでポピュラーです。中・大型のものは、コンポーネントタイプの難点である「面倒な音づくり」を、あらかじめ作り込んで一つのボックス(箱)にまとめたものです。
小型タイプ
中・大型タイプ
特殊用途タイプ
小型タイプ 中・大型タイプ 特殊用途タイプ
概要: 直径10〜20cm程のフルレンジスピーカーをコンパクトなボックスに収めたスピーカーで、高音域スピーカーを追加したタイプもある。
用途: 商業店舗のBGM、小規模なイベントSR
概要: 直径20〜38cm程の低音域スピーカーと定指向性ホーンを組み合わせたものを一つのボックスに収めたもので、イベントSRなどの仮設用途を考慮した軽量・コンパクトなタイプが主流、そのまま固定設備に流用されるケースも多い。
用途: 中〜大規模なイベントSR、同規模の固定設備
概要: ホール劇場等の固定設備での利便性を追求してつくられたもので、スピーチの明瞭性を重視してヒトの声の帯域を受け持つ中域スピーカーを独立させてあるほか、設置したまま背面からスピーカーユニットの交換を行えるなど様々な配慮がなされている。
用途:
ホール劇場施設などの固定設備

以上のように、サウンドシステムを構成する機器は実に多様で、システムを適切に設計するためには、それぞれの機器の特長を理解したうえでその空間に見合ったものにしていくことが大切です。

 

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