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想像力がセッションしあう「花音」の舞台裏をたずねて

想像力がセッションしあう「花音」の舞台裏をたずねて

2011年よりスタートした、TOA、サンテレビ共同制作の番組「花音(かのん)」。
テーマは、伝統工芸の舞台や四季折々の情景など、兵庫・神戸ゆかりの「日常の音」です。
美しい映像と、想像力を刺激する演奏に誘われて、音の世界を旅する5分間。
そんな「花音」制作の舞台裏の、知られざるこだわりをお届けします。

語り手

  • 宮嶋哉行

    即興音楽家・ヴァイオリン奏者

    みやじま さいこう宮嶋哉行

    幼少期からの「音好き」、TOA吉村。日常の音の面白さに魅せられた、花音の企画担当者。忘れがたいのは初回の「匠の響き」制作後のこと。

    花火のもつ華やかさ力強さだけでなく、一瞬で消え去る切なさを表現したかった。僕は感情から音楽にアプローチするタイプなんです。

  • 安永早絵子

    打楽器奏者

    やすなが さえこ安永早絵子

    兵庫県出身。音大在学中より演奏家としての活動を始め、現在はオーケストラやアンサンブルを中心に活躍中の安永さん。「花音」ではシーカヤックを取り上げた「風を感じて」が印象深いとか。

    もう言葉で表現できない気持ちよさで頭の中まで虹色に!ゲストミュージシャンのガムランの響きもぴったりでした。

  • 岡部翔子

    株式会社ジーベック
    音響エンジニア

    おかべ しょうこ岡部翔子

    「花音」に関わる3人の録音編集エンジニアのひとり、ジーベック岡部。「花音」で一番のお気に入りは、神戸長田の靴工場を取り上げた「くつのまちを彩る音」だそう。

    機械が奏でる“ガッタガタ、ガッ!”という独特のリズム感が好きで…。そのリズムを木琴がなぞって、そこにヴァイオリンが重なる感じがいいんです。

  • 吉村真也

    TOA株式会社
    広報室(花音企画担当)

    よしむら しんや吉村真也

    幼少期からの「音好き」、TOA吉村。日常の音の面白さに魅せられた、花音の企画担当者。忘れがたいのは初回の「匠の響き」制作後のこと。

    完成音源をサンテレビの方々に聞いていただいた時、“めざしていたのはこういうことだったんですね、やっとわかりました!”と、一気に理解が深まったんです。

"日常の音"の豊かさ、面白さに魅せられて

「花音」は、兵庫県ゆかりの「日常の音」の魅了を再発見していただくことを目的としてますが、皆さんはこれまで日常の音をどんなふうに意識されていましたか?

安永

踏切やクラクションなどの街の音、教室の黒板の音。昔から、そんななんでもない日常の音でも「これはどういうリズムかな」なんて考えてはいました。「ポーポー、クルックー」っていう鳩の鳴き声は何拍子なんだろう、リズム譜に割ったらどうなるだろう、とか。

日常の音の豊かさ、面白さに魅せられて
宮嶋

僕は20年ぐらい前から、コンピューターを使った音楽制作に、自然音を取り入れる試みはしてたんです。たとえば雨の日に車が通る音、あれって意識がさーっと連れて行かれる感じがあるでしょう。そういう街の音や自然音をパソコンに入れて楽器音とミックスしたり。でもそれはあくまでパソコン内の制作作業であって、「花音」はそれを生でセッションして作っているというのが面白いですね。「花音」始まっての発見は、安永さんみたいに「不規則な自然音をリズムに置き換えて考える人がいる!」ということ(笑)。僕とは違う音楽へのアプローチで、面白くて勉強になりましたね。

吉村

実は、日常の音&楽器演奏というのは、TOAのメセナ活動の中で以前から蓄積してきた手法なんです。当時は舞台作品という形でしたが、宮嶋さん、安永さんとは、そうした活動の中で音楽性に惚れ込んだというか、、、「花音には、この二人だ!」と直感できるアーティストでした。そこで、初対面のお二人に、いきなりコンビを組んでいただいたんです。それに、TOAにはジーベックという制作のプロがいて、自社内で音楽づくりができる強みがある。花音は、こうしたメセナの蓄積と自社の強みを、テレビ番組の中で発揮するという新しい挑戦でした。音へのこだわりと、神戸の魅力を広く発信することにつながればと思っています。

日常の音の豊かさ、面白さに魅せられて

楽譜のない世界で、自由に羽ばたくイマジネーション

では「花音」の音づくりは、どういったプロセスで行われているのでしょうか?

岡部

毎回、取材映像が先に上がってくるので、まず吉村さんがその映像と原音を確認して作り上げた「脳内妄想」のメールが、全員に届くんです(笑)。「ビートのない不思議な和の感じで」とか「ヴァイオリンとイルカでハモって神秘的に!」とか。それで大まかなイメージを共有して、あとはスタジオでセッションしながら作っていきます。「花音」の場合、楽譜も何もなくて、あるのはただ映像と原音だけ。とにかくひたすら映像を繰り返し見て、そのうちいいフレーズがぱっと思い浮かんだらすぐに録音。一番のテーマは、原音であれ楽器音であれ、とにかく素材の音を生かすことですね。

楽譜のない世界で、自由に羽ばたくイマジネーション
安永

毎回、完成するまでにかかる時間もまちまちで、サクッと早くできる時もあれば、延々悩むこともある。音づくりで議論になることももちろんありますが、頭で考えて言葉で表現しているのと、実際に音を出してみるのとでは違うので、とにかくやってみますね。そうすると「あ、これは違うね」っていう判断は不思議とみんな一緒なので、前に進めるんです。

宮嶋

初回の「匠の響き」(名物「明石焼き」専用の銅鍋づくりを取り上げた回)でいうと、職人さんの打つビートを基調として生かしながら、職人さんの頭の中でだんだん感情が盛り上がってくる感じを音楽的に表現したいなと思いました。原音のリズムや音調に加えて、その人の内面的な情動も伝えたい。音楽の持っている「感情にアプローチする力」を取り入れることで、「花音」で流れるたった1分の楽曲でも、音楽だって感じていただければ嬉しいですね。

楽譜のない世界で、自由に羽ばたくイマジネーション
岡部

毎回、次は何を録るんだろうとワクワクしています。そもそも「何の楽器で録ろう?」というところからのスタートですから。13回目の「ローカル線に魅せられて」(加西市の北条鉄道を取り上げた回)は、スタジオに線路の枕木を持ってくると聞いて、「ええーっ?」って(笑)。

安永

北条鉄道さんがご厚意で、枕木とレールをくださったんですよね。今は私の所属するオーケストラの楽器になっていますよ(笑)。収録では実際にレールを叩いて原音のリズムを補てんしているんです。

楽譜のない世界で、自由に羽ばたくイマジネーション
吉村

あれ、持って帰るの、重かったですよ(笑)レールって叩く場所によって音色が違うんです。だから、いい音が鳴る場所を探して、何種類もバチを持ちかえて試してみたり。原音を生かすのが花音ですが、原音を生み出す素材を楽器として使ったのは初めてでした。思い入れの深い作品ですね。実は、日常の音&楽器演奏というのは、TOAのメセナ活動の中で以前から蓄積してきた手法なんです。当時は舞台作品という形でしたが、宮嶋さん、安永さんとは、そうした活動の中で音楽性に惚れ込んだというか、、、「花音には、この二人だ!」と直感できるアーティストでした。そこで、初対面のお二人に、いきなりコンビを組んでいただいたんです。それに、TOAにはジーベックという制作のプロがいて、自社内で音楽づくりができる強みがある。花音は、こうしたメセナの蓄積と自社の強みを、テレビ番組の中で発揮するという新しい挑戦でした。音へのこだわりと、神戸の魅力を広く発信することにつながればと思っています。

楽譜のない世界で、自由に羽ばたくイマジネーション

これまでに24作品が作られていますが、最初の頃と比べてアレンジが進化したりもしているんですか?

安永

ミュージシャンは自分の表現を聴いてもらうのが仕事だから、ふつうは音を出さないと、自分が存在する意味もないわけですよね。でも「花音」では、「ここに私の音はいらないな」と判断して、あえて抑えることも大事なんです。昨日収録した作品(おしゃべりなイルカたち)なんか、私の鳴らす音は極端に少なかったんですが、その方が素材を生かせたり、セッションで他の楽器を生かせたりするんだと自覚してあえて引き算する、そういうのが私は新鮮で楽しいです。

映像・音楽・音響。それぞれの強みをひとつに

吉村

テレビは通常、秒単位で画面や音などの要素を詰め込む世界だから、「花音」のようにナレーションもなしに1分間映像と音楽のみというのは、あまり例がありません。でも初回を見ていただいてからは、サンテレビの皆さんの見方が明らかに変わりました。テレビ局には、映像にBGMを当てる専門家もいらっしゃるんですが、「この場面にこの音を当てるという発想は、自分たちにはなかった」と言ってくださって。最近では、「この映像ならどんな音をつける?」という、映像班からの挑戦のようなものも感じるようになってきました。

岡部

私は音を編集ミックスダウンしているから分かるんですが、音楽だけ単体で聴いても、作品として成立していますね。通常の制作のセオリーとまったく違う「花音」は、私にとって初めての経験ですが、原点となるコンセプトを大切に、演奏される皆さんが描くイメージをできるだけ忠実に伝えられるよう工夫しています。

宮嶋

ふだん私は、場の雰囲気や感じたことなどを即興で演奏するスタイルをとっています。少なくとも1曲15分はあるものばかりなので、1分の曲は初めての挑戦でした。また、映像にBGMや効果音を当てる、という発想じゃないから、映像なしでも音楽として成立するぐらい「音楽力」がないと面白くない。でも音楽の力次第で、ドキドキする緊張感のある1分になる可能性は十分あるんです。

安永

それに、私たちが音楽家の立場で走りすぎると、一般の視聴者の感覚から遠ざかってしまいかねません。そこで吉村さんが客観的な立場から意見を出していくことで、最終的に「わかりやすく、楽しい」作品へとスタッフ全員で仕上げるようにしています。ありふれた素材からでも、イメージをふくらませて感情に訴えかけるようなものを作り上げていく。それはミュージシャンとして大切にしたいことです。

吉村

いかに音を好きで、固定観念に囚われないアプローチで音づくりに関われる人かどうか。あとは、セッションで「生かしあい」ができるコミュニケーション能力ですね。映像のプロ、演奏のプロ、音響のプロ。それぞれの分野のプロが、同じ土俵の上で楽しみながら技量を発揮しあう、それが「花音」を作っている原動力だと思います。

映像・音楽・音響。それぞれの強みをひとつに

聞き手 : TOA株式会社 広報室

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