世界に広がるTOA 第1回:インドネシア
第1回 TOAが支えるイスラムの祈り ~インドネシア
モスクに設置されたTOA商品
鮮やかな絨毯にひざまずき、祈りを捧げる人々。
厳粛な空間に響くコーランの響き――。
世界で最も多くのイスラム教徒を抱える国、インドネシア。各地で、コーランを朗読する聖職者の声をモスク(礼拝堂)内に響かせているのは、TOAのインドネシア工場で生産されたアンプとスピーカーです。モスク向けのみならず、商業用途、公共施設などにも幅広く放送設備を納めており、圧倒的なNo.1シェアを占めています。
1975年、初の海外生産拠点として進出
TOAの社名がホーンスピーカーの代名詞に
インドネシア工場TGIミニチュア
インドネシアは約2億2千8百万人の人口を誇る、世界第4位にしてASEAN最大の国家です。TOAはこの国に1975年には、現地企業と合弁で初の海外工場を建設。現在では2つの工場を構え(PT. TOA GALVA INDUSTRIES、PT. TOA GALINDRA ELECTRONICS)、従業員800人体制で現地向け商品を生産する一方、日本やアジア各地への輸出も行っています。
インドネシアには、日本でいう“村の鎮守”くらいの規模から1,000人以上を収容できる大礼拝堂まで、数万に及ぶモスクが全国に点在しています。そして、どのモスクにも人々にお祈りの時間を知らせるホーンスピーカーや、聖職者の声を伝えるコラムスピーカーシステムが取り付けられています。この市場こそ、TOAがインドネシアで最も得意とするところです。
特にホーンスピーカーでは市場をほぼ独占しており、現地では、TOAの旧社名:東亞特殊電機の響きである「トーア」そのものが、ホーンスピーカーの名称として定着すらしています。これらの多くは、インドネシアの現地合弁工場で生産された商品です。
一方では、現地の経済発展に伴い増加している高級ホテルやショッピングセンター、オフィスビルなどの非常用放送設備でも、TOAはシェアNo.1を確保。大学などの教育施設とも取引を広げています。
モールinジャカルタ
Regional Sales Manager 大村光弘
アジア各国の需要に応えるため“地産地消”体制へ
TOAのアジア・ビジネスは、もちろんインドネシアだけには止まりません。ASEAN最先進国のシンガポールには、アジア・オセアニア地域の事業を統括する現地法人「TOA ELECTRONICS PTE LTD」を置き、現地でもショッピングモールやオフィスビルに放送設備関連のハイエンド機器を納入。一方、マレーシアでは、モスクや商業施設の開拓に取り組み、タイでは大学施設や仏教寺院などの放送設備で高いシェアを獲得しています。
ただ、ひとくちにアジア市場といっても、求められる商品嗜好は国ごとに大きな差があります。例えばベトナム市場では、高価であっても高品質で高機能な商品が一般的に好まれる一方で、近接するタイやマレーシアの市場では、安価な商品から先に売れていくといった具合に違いがあります。
これらの細かなニーズには、遠く離れた日本で商品を企画・設計していては対応できません。そこで現在取り組んでいるのが、アジア向け商品の企画・設計の現地化。その急先鋒が、インドネシア工場に置かれた現地技術者による開発チームです。
現地技術者たちは現在、日本から派遣された技術者の指導でASEAN市場各地に向けた商品の開発に従事。既に中小店舗向けのBGM用スピーカー分野では、彼らが開発した商品がアジア各国の市場に出回り始めています。将来的には、現在日本で企画・設計している地域向け商品を順次置き換えていき、“地産地消”の体制を整えます。一方で、高級AV市場などの世界に共通した市場向けに、日本の開発力を集中させていくのが、TOAの将来ビジョンです。
インドネシアへ受け継がれた“匠の技”
アルミ板を手作業で搾り込み、トランペットスピーカー独特のシェイプをかけた曲線を作り出す技術「へら絞り」。TOAのインドネシア工場では、35年前に日本から持ち込まれたこの“匠の技”が、今でも現地技術者によって受け継がれています。
「へら絞り」は機械で行うこともできますが、どうしても微妙な歪みが出てしまいます。本当に美しい曲線は、手作業でしか作りだせません。
かつて日本の技術者たちから技を学び、長年かけて磨き上げてきたインドネシアの技術者たち。作業に用いる右腕がたくましく発達した彼らの姿は、TOAグループの誇りです。
価格力とプレミアム力の両立を
TOA ELECTRONICS PTE LTD社長
由良正人
アジア市場では近年、安価な普及品と高機能品との間で需要が2極化しつつあります。この双方に対応するには、市場に密着した、価格面でも勝負できる商品を現地で開発・生産していく一方で、高品質の商品を世に送り出すことで、“音”に対する市場の要求レベルを高めていく必要があります。いま、インドネシアなどで手掛けている取り組みは、その先駆けとなるもの。安価な現地メーカー品に迫る価格力と、残る価格差をカバーできるプレミアム力を両立し、アジア市場で確固たるブランドを確立していきます。